小鳥たちの朝の会

三田洞の、山頂近くに展望台があります。

とてもいい空気が流れている場所です。

空気が澱むなんてことは決して起きそうもない。立っているだけで、心から気持ちがいいと感じる、そんな場所です。

この展望台の付近に設置しました。

ここで、朝、小鳥たちはどんな集会を開いているのだろう。

どんな会話がなされているのだろう。

そう思うと、わくわくしてきます。

これは、その気持ちのまま、録音装置の入った木箱を担いで山を登り、山頂付近に仕掛けてきた日の話です。


目次

天気を待つ

前々から、ここで録音したいと思っていました。

けれど、何日も続けて録ることはできません。 一晩ぶん仕掛けて、翌日に回収する。それだけです。

ですから、日を選びます。翌朝の天気がいい日を見つけて山に登り、その翌日もまた登って回収に行く。

天気のいい日。プラス、風の穏やかな日。

見るのは2つです。雨の予報と、風速の予報。 この2つが、その日に登るかどうかを決めます。


風の流れ道を想像する

山に着いたら、仕掛ける場所を探します。

ここがいいかな。ここがいいかなー。あちこち歩いて、いろいろ探します。

山の斜面で、見晴らしのいい場所です。ということは——風が流れやすい場所でもあります。

マイクに風が当たると、それは雑音になってしまう。

ですから、工夫が要ります。風の流れ道を想像して、風の当たらない位置を探す。 大木の陰に置く。地形を見て、ここなら風が抜けていくだろう、と考える。

実際に仕掛けた場所。
ここには大木が無かったけど、ちょうど斜面の傾斜が強くて風よけになる感じでした。

場所を決めて、設置。マイクのタイマーもセットします。

最高にわくわくする時間です。

うまく録れるかなぁ。


歌いながら下りる

帰り道も、ずっとわくわくしています。

薄暗い山道です。けれど、怖さよりワクワクのほうが、少しだけ勝っている。

だから、歌を歌いながら、楽しく下山します。

帰りの夕方の山道。ふもと付近では、陽射しが届かない場所は真っ暗になります。懐中電灯必須です。

家に帰っても、落ち着きません。

夜から雨が降っていないか。 天気予報が変わっていないか。何度も確かめます。

そして明け方。

いま頃、録音してるかなぁ。

そう想像して、朝からまたわくわくしています。今日もこれから山へ登って、木箱の回収です。


早く聴きたい

回収しての帰り道は、もう、すぐに聴きたくて仕方がありません。

わくわくしながら家に帰って、ハイレゾの音響装置につなぎます。

早朝の小鳥たちの声が、やっと聴けます。


小鳥たちの朝の会

そこに録れていたのは、まず——深夜の、完全な静寂でした。

音がない。ただ、何もない時間が続きます。

アプリ内の早朝のイメージです。風のないシーンとした穏やかな湖の朝

あるタイミングで、遠くのほうで小鳥がささやき始めているのが感じられました。

まだ声とも言えないような、小さなささやき。

それから、徐々に。

あちらこちら、方々から、小鳥たちが囀りはじめるのです。

それはまるで、小鳥たちの朝の会の始まりでした。

こんなにも美しくて素敵な、世界の始まりを感じられること。

感動しました。

遠くのほうでも、すぐ近くでも。山のあちらこちらで鳴いている小鳥たちの、幾重にも重なった合唱。


これは、ただ山を歩いているだけでは、決して気づかない世界です。

車で山を走っていては、何千回山に行こうが、絶対に感じることのない世界です。

この体験をしてから、私は目覚めました。

いろんな山の、小鳥たちの朝の会。その美しい世界を録音することに。


定点で録る

美しい小鳥の声を探し歩いて録音することも、とても楽しいのです。

けれど、これは大きく違います。深夜から録音を開始して、まだ世の中が静かなうちに、いちばんに始まる小鳥たちの世界。

大きく違うのは、「定点での録音」だということです。

マイクは動きません。ずっと同じ場所にいます。

遠くのほうで鳴いている声。近くの小鳥も鳴きだした。すごく静かになる時間もある。

だけど、その静寂もまた、ずっと楽しめるのです。

歩いて探していたときには、静かな時間は「何も録れていない時間」でした。定点で録ると、静けさそのものが、その朝の一部になります。


この「小鳥たちの朝の会」の録音。

ハイレゾの音源データにして、近いうちに、みなさんにも聴いていただけるように用意したいと思います。

静寂と、小鳥たちの朝の世界。

本当に、美しいです。


朝の目覚ましに使っている「小鳥の声めざまし」にも、こうして録った声が入っています。

小鳥の声めざましについて

岐阜の山あいから、羽賀明人

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